軟体動物のブログ

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2024年マイフェイバリットドラマアワード

あくまで2024年時点で見た範囲内の話をしています。録り溜めていて翌年以降に見ている場合も多々あり。ご容赦ください。

 

 

 

【作品賞】

※連続ドラマ

※かぞかぞこと『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった。』は昨年の最優秀作品群にノミネート済みのため泣く泣く選外としています。

 

 

①仮想儀礼/NHK

仮想儀礼、それは金のためにインチキな宗教をでっち上げた愚かな二人が、真理と営利を追求するありがたい物語である。合掌。(cv. 津田健次郎)

簡単に誠とか真実とかの名前が付けられない病気にかかりました。宗教、そして、神を創りあげるとはどういう行為なのか。宗教を必要としない人も多い現代日本人にとっての宗教や『救い』とは何か。我々は本当に宗教を必要としていないのか。では、それの代わりになるものは何か。彼らの運命を見届けた上で最初から見返すと新しい発見があります。金儲けの手段は他にも数多存在するのに、なぜ宗教を選んだのか。

主人公二人の破れ鍋綴じ蓋コンビはどこかBBCSHERLOCKの二人のようです。ちなみに、今年話題の齋藤潤くんも出ています。

 

舟を編む/NHK

学生時代、原作を日々持ち歩いて暇さえあれば読んでいた身からすると、再びの実写化、そして主人公が馬締ではなくみどりである点にはしばしの不安がありましたが、NHKドラマ班への信頼と事前情報のキャスト陣からして見たいと思わされました。

10話という長い時間を使って、原作のよさを最大限に活かした2024年改訂版として非常に秀逸な出来上がりでした。オリジナル要素に一切無駄がなく、何度も唸らされました。原作が書かれた当時ではなく、2024年に生きるみどりと玄武書房辞書編集部の物語でした。デジタル媒体の躍進や出版業界のさらなる冷え込みなど、環境が変わっていく中で、変わらないもの、変えるべきではないところは何か、歴史を記録に残すということ、そして言葉を使うことの意味と影響を考えさせられます。

画面に辞書の文字が浮かぶ演出も秀逸で、ベスト演出賞です。池田エライザさんの繊細な演技に惚れ惚れとし、前田旺志郎さんの存在が素晴らしく、柴田恭兵さんの松本先生と岩松了さんの荒木さん、野田洋次郎さんの馬締と向井理さんの西岡のツーカー感、渡辺真起子さんの安心感をくれる佐々木さんも三村里江さんによるパキッとした香具夜さんも、宮本さんもヲタムちゃんもハルガスミさんもみんな大好きです。水木しげるの回、ぴょんぴょんクルクルの回など思い出深いものばかりで、かつ、原作の馬締編のエピソードも丁寧に掬い上げられていると感じました。言葉を丁寧に丁寧に、誠実に扱った脚本に脱帽。

 

③宙わたる教室/NHK

定時制高校の科学部が教室に火星をつくる、という設定だけでわくわくと夢が広がります。特に、同じ机を使う定時制の生徒と全日制の生徒で文通をしたシーンは本当に可愛かったし白線流しを思い出したし、全日制の子との交流も好きです。

去年に引き続いて素敵な先生によって人生を変えられた小林虎之介さんを見届けられて嬉しかったです。部活は学校を卒業したら何の役にも立たない、わけじゃない、意味はあるんだよ、と言ってくれる物語です。

本作では定時制ということもあり、勉強することを教えてくれる先生なのが非常に良かったです。僕は高校で勉強以外ももっと楽しめたら良かったとも思いますが、勉強ももっと頑張れたら良かった。しんどかったけれど、きっと面白い勉強をさせてもらっていたのでそれについていけてたらもっと楽しかったのだろうなと思います。

登場人物にそれぞれの事情や信条があって、単に悪い人を出さなかった点も良かったです。「本当に悪い人はいない」という言説も度々耳にします。僕はそれは些か性善説がすぎるとは思いますが、本作では「事情があって悪い方へ行ってしまうことは往々にしてある」ということを描いたこと、かつ、物語に都合のいい『主人公サイドに苦難を与えるためだけの舞台装置としての悪役』ではなく、それぞれの来し方に思いを馳せることができました。

 

④光る君へ/NHK

紫式部藤原道長がソウルメイト、という設定に驚きはありましたが、回が進むにつれ、これをソウルメイト以外の言葉でどう表すことができるのか、と頭を抱えました。大河ドラマで死体埋めを見ることができてよかったです。(どういう感想?)

初回から最終話まで、視聴者を信じたドラマだと感じました。幼い女の子(しかものちに紫式部と呼ばれる)が鳥籠から鳥を逃がしてしまい、追いかけていった先で運命の人と出会う、という全俺(源氏物語オタク)が立ち上がる展開からはじまり、源氏物語のオマージュが細部に張り巡らされた展開で、見ていて本当に楽しかったです。なんといっても『枕草子』『源氏物語』が誕生するシーンは、この世にこんなに美しいシーンが存在するのか、というほどの凄まじい絵力でした。

紫式部清少納言は史実では出会っていたかどうかもわからないし、現存する資料によって不仲だったとされていますが、ききょうとまひろが並んで仲良く語らうシーンはあまりに眩しかったです。物語が進んでいくにつれ立場が異なっていく様は史実とはいえ胸が苦しくなりましたし、年を重ねた二人がまた並んでいる姿を見ることができて多分一番泣きました。

大河ドラマにおいて超えるべき壁であることの多い父親役ですが、本作の父・為時は優しく学のある聡明な方でした。しかし、その父をもってしても「お前が男であれば」と言われてしまう時代の中、彼女たちが物語の力でたしかに歴史を変えた、その事実に変わりはなく、涙を禁じ得ません。

僕が連続ドラマを好んでみる理由に、次の週までの時間に続きが気になって気になって仕方なく地獄のような時間を味わう(褒め言葉です)ことを挙げているのですが、最終話のくだりを見て、「自分もこうやって物語の続きを人生の拠り所にして生かされているのだな」と改めて感じました。

東京DOGSから吉高由里子さんを見てきたオタクとして、大河ドラマの主演をされている吉高さんを見届けることができて、しかもこんなに素晴らしい作品に出会うことができて、感無量です。

 

⑤虎に翼/NHK

自分もあまり「スンッ」となれない性格なので、寅子の人生と彼女たちの軌跡を見届けられたことは得難い経験でした。一人ずつ減っていく仲間とか、自分の考えが伝わらない価値観の違う人たちとか、信じていた恩師に突き放される経験とか、身に覚えがありすぎましたが、それでも私でいることの難しさと眩しさがありました。

接する人や環境によって自分が違って、どれが本当の自分なのか見失うことはありますが、それを"全部自分"としたところに良さがありました。これは本当の自分ではないと思い込む行為は自分でも言い訳だとわかっていて、それでも自分を自分だと認められないから『自分じゃない』と思い込むのだと思います。そして、人は変わることも描かれていました。人はいい方向へも、悪い方向へも変わるし、変わらないところもあります。 なりたい自分があるならそれを大切にして、と僕も梅子さんに声を掛けてもらった気持ちでいます。

 

⑥アンメット-ある脳外科医の日記-/カンテレ

本作も非常に丁寧に、大切につくられた印象が強いです。息をする音すら聞き逃したくないようなシーンもあり、そこに生きている人たちを影から見せてもらっている気がしました。作品を尊重したつくり、というものはこういうことだと体現したドラマだと考えています。

俳優陣の上手さ、作品としての完成度の高さはさることながら、仕事をすること、人間の権利にも強いメッセージ性がありました。

 

⑦燕は戻ってこない/NHK

普段、共感できるドラマが求められていると感じますが、本作は、『誰にも共感できないのに、続きが見たいと感じる』不思議な作品でした。見届けなければならないという感情にも近いのかもしれません。生殖医療と人権、親権、貧困など難しい問題が山積みなテーマを題材にする胆力、現実離れした設定だからと夢物語にせず、登場人物を物わかりのよく物語の都合のいいように理想的に動く人物にしなかった点が非常に評価が高いです。

 

⑧海に眠るダイヤモンド/TBS

東京と端島の対となる演出も印象的でした。最終的に一島一家の精神を現代にも持ってきた構成は非常に痺れました。幼馴染ズもさることながら、國村隼さん沢村一樹さんのお父さんズも大変素晴らしかったです。

また、各宗教の描き方も良かったです。仏教はあまり詳しくないのですが、神様は人間に基本的に干渉しないことを前提とされているので、神様に祈っても助からなかったとしても、祈らない理由とはまた別の問題である、という点が明示されていました。

 

 

【短編ドラマ賞】

ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!/テレビ東京

初回から見ていないのでこちらの部門へ。オープニングとエンディングとかもクオリティーが高くて良かったです。バディーもので見たいものを詰め込んでもらった印象があります。コメディータッチでありながら、殺し屋という仕事を続けるということ、自分が生きる意味、そしてお互いの存在について描いていて、これがバディーだと号泣。BSで最初から見ます。

 

スペシャルドラマ賞】

大川と小川の休日捜査/テレビ東京

このバディーが見たい2024。テレ東で松重豊さんと濱田岳さんのバディー第2弾をやる。←これは全俺が喜ぶ文面です。前作では初対面だった二人が二年の時を経てツーカー感が増していて非常にニコニコいたしました。松重さんが前作のコメントで本シリーズは今後20年テレ東のドル箱になると仰っているので、次回作も楽しみに待ちたいと思います。

 

【ベストサウンドトラック賞】

Jun Futamataさん

(降り積もれ孤独な死よ/読売テレビ)

作品のクオリティーを引き上げた映像の美しさと緊張感のあるサウンドトラックには特別な賞を進呈したいです。特にメインテーマは、放送時期も作中もほとんどのシーンが夏なのに背筋が寒くなるような鋭いストリングスと寂しさを感じるヴォーカル、ピアノの音はまるで降りしきる雪、独特なパーカッションはそれを踏みしめる足音のようでした。サスペンスらしく不安を煽るような曲からノスタルジーを感じる曲まで、振り幅がありながらも雰囲気の統一されたサントラは非常に素晴らしかったです。「テレビ報道記者」のサントラも好きでした。

 

【ベストオープニング賞】

降り積もれ孤独な死よ/読売テレビ

本作のどこかホラー味のあるサスペンスの雰囲気の一翼を担っていました。全てはあの屋敷からはじまった、という作品構造を体現するオープニングでした。

 

 

 

【ベストバディ賞】

ズッキーと誠(仮想儀礼/NHK)

全俺が詐欺師バディーを好きですが、ズッキーこと鈴木正彦の根の人の良さそうな男感と誠の出会ってはいけない男感の対比が美しすぎました。都庁に勤めながらどこか冒険を求めていた男と、ずっと××(ネタバレ)を求めていた男が出会って人生がお互いに大きく変わっていく物語でした。

 

松本先生と荒木さん、馬締さんと西岡さん(舟を編む/NHK)

辞書の鬼・松本先生と辞書に人生を捧げた男・荒木さんは原作開始時点で三十年来の付き合いですから、とんでもない長さと深さのコンビです。若き日の松本先生と荒木さんを実写で見れるとは思っても見ませんでした。

原作でもそうですが、西岡さんをもう一人の辞書編集部員とし続けてくれる辞書編集部、好きすぎる。舟を編むはみんなベストバディーです。

 

山田轟法律事務所(虎に翼/NHK)

よねさんと轟さんは前半の名律大学編からかなり対照的でありながら、その本質に通じるものを感じていたので、後半で本格的にタッグを組んで凸凹コンビっぷりが素晴らしかったし、梅子さんとのトリオも好きでした。

 

宮部さん、坂本さん(ダブルチート season2 /wowow テレビ東京)

season1では多家良さんと矢柴さんの詐欺師コンビが非常に良かったです。season2で急遽組むことになる二人で、ジェネレーションギャップをはじめギャップが大きそうなコンビでしたがこの二人が癒しでした。

 

【ベストいつメン賞】

名律大学女子部法科(虎に翼/NHK)

寅ちゃん、よねさん、梅子さん、ヒャンちゃん、涼子様、玉ちゃん、みんな大好きです。

 

桂場滝川ライアン(虎に翼/NHK)

それぞれ癖が強い人たちですが、お互いにお互いをわかっている感が好きでした。皿を食べる桂場さん。

 

平安F4(光る君へ/NHK)

大河ドラマで最後まで幼馴染が仲良く酒を酌み交わすことがどれだけ難しいことか。なんだかんだみんな道長のことが大好きで可愛かったです。

 

端島幼馴染ズ テッケン団(海に眠るダイヤモンド/TBS)

最初はなんて複雑な矢印なんだ、という印象でしたが、恋だけでなく愛の矢印に溢れた人たちでした。最終回のテッケン団は涙なしに見れないです。誰かを大切に想うがゆえの嘘は優しくて、苦しくもその人の人となりが現れていました。朝子さんは幼馴染たちから大切に大切にされてきたのだなと感じました。

 

【ベスト兄賞】

藤原道綱(光る君へ/NHK)

最後まで道長の側にいてくれたお兄ちゃん。嫌いになどなりませぬ。

 

藤原道兼(光る君へ/NHK)

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【ベスト弟賞】

藤原惟規(光る君へ/NHK)

自分より学問が得意な姉上を妬まずカラッとしてくれていたのが救いでした。

 

【ベスト和尚】

和尚(海に眠るダイヤモンド/TBS)

みんなが知り合いの島の距離の近さは窮屈な時もあると思います。そこに和尚のような話を聞いてくれる大人がいることの有り難みは計り知れません。

 

 

 

 

以上となります。

長文にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

来年も素晴らしいドラマと出会えますように。